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第75部・心を整える

(2347)病的窃盗 リスク知りながら「やめられない」 「逮捕の前に受診を」
北國新聞(朝刊)2019年05月19日付

病的窃盗のリスクについて説明する廣澤助教=金大附属病院
 気になった瞬間、商品棚に並んでいた食品をかばんの中に隠していた。犯罪と認識しているのに、盗みを止められない病的窃盗(窃盗症)はれっきとした心の病気だ。逮捕され、ようやく病院にかかる事例が多いが、専門医は早期の受診を呼び掛ける。

 「病的窃盗は、自分だけでなく周囲にも大きな影響をもたらす。怖いのは、盗みに伴うリスクの大きさが分かっていながら、衝動を抑えられないことだ」。患者の治療に当たる金大附属病院神経科精神科の廣澤徹助教は語る。

心に誓っていても

 中高年の女性は近所のスーパーで食品の万引を繰り返していた。警察につかまったものの、初犯だったこともあり、執行猶予がついた。「もう絶対やらない」。固く心に誓っていたが、スーパーで商品棚を見ているうちに盗みたい衝動がわき起こってきた。

 「次つかまったら、実刑を食らう。今度は家族にも見放されるかもしれない」。行為に対する代償の大きさを理解していたものの、商品をポケットにねじ込んでしまった。店を出たところで、通報を受けた警察に逮捕された。「どうしても、止められない」。涙ながらに話すと、弁護士から病院を受診するよう勧められ、心の病気であることが分かった。

 病的窃盗の診断にはいくつかの基準がある。代表的なものでは▽複数回にわたって、盗もうとする衝動を抑えられなかった▽窃盗行為が金銭や、「店に嫌がらせをしたい」「悪いことをしたい」など反社会的な行為を目的としていない▽盗む直前に、緊張を感じ、その後には大きな開放感や快感が得られる―がある。さらに他の病気によって、これらの症状が出ていないことが前提となる。廣澤助教は「実際、経済的には十分な余裕がある患者が多い」と語る。

 なぜ、このような症状が出るのかは未解明だ。国内での発症率に関するデータはないが、米国での発症率は0・3〜0・6%、万引の容疑者では4〜24%とされており、廣澤助教は「日本でも同程度の患者がいると考えられるのではないか。面白半分で万引をしていて、この病気を発症する人もいる」と語る。男性よりも女性、特に中高年が目立つという。

 分かっていながら犯罪の衝動を抑えられないのは、耐え難い心情だ。ただ、廣澤助教は「根気よく取り組めば、治療できる事例はある」と語る。

抗うつ剤服用で効果

 病的窃盗の患者は脳内で、神経細胞が情報を伝達する際に使われる物質「セロトニン」に異常があらわれているケースが多い。このため、セロトニンの状態を通常に近づける「抗うつ剤」による効果が期待できるのだ。薬物療法に、臨床心理士によるカウンセリングなど認知行動療法を組み合わせるのが治療の基本となる。

 廣澤助教はさらに早期受診が重要とする。病的窃盗は多くの精神疾患と同様、誰かにうつることはないが、患者が逮捕されたり、犯罪行為を繰り返したりしていれば、家族の心理面にも大きな影響をもたらす恐れがある。「自ら行為を告白することは勇気がいるが、捕まる前に受診してほしい。その上で周囲が支えていくことが大切になる」と廣澤助教は語った。



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