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第75部・心を整える

(2349)統合失調症 環境、遺伝子、要因さまざま 三つの治療法で共生
北國新聞(朝刊)2019年05月26日付

治療は早い段階で始めることを勧める橋本准教授=金大
 実際にはない声が聞こえたり、見えない物が見えたり、妄想にさいなまれたりする。まとまりのない行動がみられることもある、「統合失調症」は100人に1人が一生涯に一度、診断基準を満たすとされる。根治こそ難しい心の病だが、適切な治療を受ければ、社会生活を取り戻すことができる可能性がある。

 「代表的な症状の幻覚は幻聴や幻視だけでない。味覚や嗅覚、触覚にも症状が表れることがある」。金大医薬保健研究域脳情報病態学の橋本隆紀准教授は語る。

複数の症状

 幻覚、妄想、支離滅裂な動き・言葉など「まとまりのない行動」の三つは、「陽性症状」と呼ばれる。これに対するのが「陰性症状」だ。気分の落ち込みがないにも関わらず、意欲や興味が減退し、一日中引きこもったり、家の中でぼうっとしていたりすることがある。さらに、仕事や学習、対人関係が苦手になる症状が出てくる。

 統合失調症が起きるのはなぜか。発症には複数の因子が重なっていると考えられている。

 一つは遺伝子の変異だ。人間の遺伝子には、個人間で異なる配列(変異)が数百万個あり、それらが人の個性や特徴を形づくっている。妊娠の際、偶発的にこれらの変異のうち数千個が組み合わさると、要因の一つになる。橋本准教授は「だから遺伝子といっても、親から子に受け継がれるという意味だけではない。両親、祖父母の血族に患者がいなくても、子どもに発症することがある」と語る。

 もう一つの要因は環境因子だ。例えば、妊娠中の母親がインフルエンザや風疹を発症すると、生まれてくる子どもの発症のリスクがわずかに高まるとされる。過度の栄養不足や強いストレスが母体にあることも、リスクを高めるとされる。さらに、生活する中で強いストレスがあったり、うまく処理できないでいたりすると、それが契機となって発症することも多い。 治療に当たってはそれぞれの症状に合わせた方法がある。陽性症状の場合、脳内のドーパミンの作用を抑える薬が有効となる。

 陰性症状には、創作活動やレクリエーションなど各種の体験を通じて感情を引き出し、心をほぐす「社会心理療法」が効果的だ。対人関係や仕事、学習が苦手な場合には、就労や人と接する訓練を行う。

前駆期のうちに

 統合失調症は、10代後半から20代後半にかけて発症する例が多い。そして本格的に病状が進む前に、不眠や疲れやすさ、知覚や考え方に変化が表れる「前駆期」と呼ばれる段階がある。橋本准教授は「治療は発症から早い段階で始めたほうがよい。最近では『前駆期』で早期に介入し、発症を予防する試みも行われている」と語る。

 ある男性は20代で病気を発症した。家族の支えもあって、服薬や社会心理療法を続けた。現在、男性は40代。ある企業で、管理職として懸命に働いている。

 橋本准教授は「全ての患者が男性のようになれるとはいえないが、可能性はある。患者も、家族も忍耐強さが必要だ。特に家族は感情的にならず、患者を否定しないような行動が求められる」と話す。根治はしなくとも病気とともに生きていくことはできるのだ。



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