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第75部・心を整える

(2350)抗NMDA受容体脳炎 「体の病気」で幻覚、妄想 外科、投薬治療で回復
北國新聞(朝刊)2019年06月01日付

抗NMDA受容体脳炎について話す坪本助教=金大附属病院
 幻覚や妄想、まとまりのない行動。統合失調症で見られる症状が現れる別の病気がある。「抗NMDA受容体脳炎」は発症の多い年代も統合失調症と同じく青年期だが、治療法が大きく異なる。この病気は心ではなく、体の不調によって引き起こされるのだ。

 精神に普段と違う症状が見られる要因は、大きく三つに分けることができる。

 一つ目は「内因性」で、「セロトニン」や「ドーパミン」などの脳内の情報伝達に関わる物質のバランスに変化が見られるケースだ。例えばうつ病や統合失調症がこれに含まれる。

 二つ目は「心因性」で、これは環境の変化などのストレスが影響した事例となる。代表格には適応障害や神経症がある。

別の病気が要因に

 三つ目が「器質性」だ。体の病気が原因となるケースで、今回の抗NMDA受容体脳炎はこれに該当する。

 精神疾患は、生じている精神症状に基づいて診断されるが、まず体の病気や薬の影響を除外する必要がある。金大附属病院神経科精神科の坪本真助教は「抗NMDA受容体脳炎では、体の別の病気によって精神症状が出ている」と説明する。

 ある女性は、幻覚や妄想、まとまりのない行動が見られたため、一度は統合失調症と診断された。投薬治療でこれらの症状は収まったものの、記憶障害が目立つようになった。

 記憶障害は統合失調症にはあまり見られない症状だ。「抗NMDA受容体脳炎ではないか」。疑問を抱いた医師らが調べて見ると、女性の卵巣に奇形腫があることが分かった。外科的に腫瘍を切除され、さらにステロイド投与などの治療を受けた女性は、その後記憶障害がなくなり、元気に退院した。

 抗NMDA受容体脳炎は、2007年に新しく提唱された病気で、卵巣の奇形腫を合併することが多い。何らかの原因で作られたNMDA受容体に対する抗体が脳内の細胞にも作用し、発症後早い段階では統合失調症のような症状を引き起こす。そのため、最初に精神科を受診することが多い。坪本助教は「男性にも起きるが、患者の8割が女性とされる。特に青年期の女性が多いとの指摘がある」と説明する。

 他の「器質性」の精神疾患の原因には、甲状腺や下垂体、副腎などの内分泌に関わる器官の異常や膠原病(こうげんびょう)などがあり、幻覚、妄想の他、躁(そう)やうつなどの気分症状を引き起こすことがある。しかし、ホルモンの補充などその病気自体の治療をすることで精神症状を改善させることが可能だ。

 坪本助教は「精神的な症状が出るときには、体の病気が原因の場合があると知っておくことは大事だ」と語る。

病状詳しく伝える

 精神科を受診した際、「関係ないかな」と思わず、ちょっとした体の違和感を医師にきちんと伝えることには大きな意味があるのだ。抗NMDA受容体脳炎は、治療が遅れると死に至ることもあるが、原因さえ分かれば治癒が見込める病気でもある。病気を知ることが健康の基礎である。



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