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第76部・ミクロの底力

(2360)肝臓がんの診断(上) 二つの方法で病変見抜く 負担少ない造影剤で
北國新聞(朝刊)2019年07月06日付

画像診断に取り組む放射線科の医師=金大附属病院
 がんは再発を伴う病気である。特に肝臓がんは治療しても、3年以内に7割の患者が再発するとされる。早期の治療が肝要で早期発見はその第一歩である。

 「肝臓がんの画像診断の方法は確実に進歩している。さらに、金大は伝統的に肝臓に力を入れている」。金大附属病院の小林聡放射線部長は話す。小林部長は肝臓がんの診断の研究に取り組み、大学院医薬保健学総合研究科で放射線技師の育成にも関わる。

治験参加、金大が唯一

 肝臓がんの診断で現在主流なのは、EOBという専用の造影剤を使って行う磁気共鳴画像(MRI)検査である。EOBを導入するための全国的な治験には、金大附属病院が石川県内から唯一参加し、安全性と有効性を確かめた。小林部長は「EOB検査の特徴は、患者に対する侵襲性(しんしゅうせい)が以前と比べて低い点だ」と説明する。

 侵襲は医学用語で生体を傷つけることを意味する。従来の肝臓がんの精密検査はカテーテルと呼ばれる細い管を動脈に通して造影剤を体内に入れ、コンピューター断層撮影(CT)で調べる方法だった。この検査自体は1時間程度だが、足の付け根から動脈内にカテーテルを入れる以上、1泊2日の入院が必要になる。

 一方、EOBはMRI検査中に腕の静脈に注射するだけでよく、MRI検査も1時間程度で、入院の必要がない。さらに、EOBによる検査は、これまでカテーテルを使用した検査でしかわからなかった肝臓がんの「前段階」を知ることができる利点がある。

 肝臓がんは、多くの過程を経て発症する。肝細胞が炎症と再生を繰り返すことにより肝臓に「再生結節」ができる場合がある。これ自体は自然な反応だが、この中からがんのもととなり得る異型結節ができ、それがさらに進行すると最終的に肝臓がんが生じる。異型結節はいわばがんの「前段階」と言え、EOBはこの段階にあることを鋭敏に把握できる。

5分以内と20分後

 EOBによる検査は大きく分けて、二つの方法で病変を確認する。

 一つ目は、造影剤を注射してから5分以内の肝臓の血液の流れから調べる方法だ。肝臓には、肝動脈と、消化管とつながっている門脈という二つの血管がある。健常な肝臓は門脈からの血流が多いのだが、肝臓がんの場合、肝動脈からの血流が多くなる。造影剤を入れ、真っ先に白くなる部位は病変の疑いがある。

 二つ目は肝細胞の機能から調べる方法で20分後に行う。肝細胞はEOBを取り込むのだが、がん細胞はEOBを取り込む力が弱まっている。肝臓の健康な部位は真っ白になるが、病変は白抜きしたように見える。

 「二つの方法で病変の大きさが1センチ程度なら、十分診断できる」と小林部長は話す。ただ、内臓を輪切りにした画像は平面でしか見えない。頭の中で立体的に再現するのは、放射線科医の力である。

 EOBを使えば、およそ8割の事例で、肝臓がんであるかどうかの診断がセオリーに従ってできる。ところが、2割はセオリー外の結果を示す。どうするのか。「ここが放射線科医の仕事ともいえる」。小林部長が力を込めた。



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