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第76部・ミクロの底力

(2361)肝臓がんの診断(下) 二重チェックで「異例」に対応 他の検査も活用 
北國新聞(朝刊)2019年07月07日付

セオリー外の事例への対応を説明する小林放射線部長=金大附属病院
 肝臓がんの診断は現在、EOBとよばれる専用の造影剤を用いた磁気共鳴画像装置(MRI)検査を行うことが主流と、前回紹介した。以前と比べて患者の体への負担が小さいという特徴の一方、本当に肝臓がんなのか、はっきりと診断できないケースがある。

若いのに気になる影

 30代の男性は定期健診の際、腹部の超音波(エコー)検査を受けた。酒もタバコもやらず、健康そのものだと思っていたが、肝臓に気になる影があると、医師から伝えられた。念のため、EOBを腕の静脈から注射し、MRI検査を受けることにした。

 EOBの検査は大きく分けて二つの方法が用いられる。注射してから5分以内と20分後の状態をみる。5分以内に、まず真っ先に白くなる部位があれば病変が疑われる。20分後は逆に全体が白くなり、白抜きした部位が現れれば、その部分が病変の可能性がある。この二つを重ねることで、精度の高い診断を目指す。

 男性の場合、5分以内の検査結果、病変の可能性が疑われる結果となった。もちろん、年齢や生活習慣を考えると、肝臓がんを発症しているとは考えにくい。ただ、もしがんを見逃せば、重大な結果を招きかねない。

 「正解を言えば、これは肝臓に『過形成』が出来ていた。肝細胞の密度や機能が限定的に高まるとできるもので、一見すると病変のように見える」。金大附属病院の小林聡放射線部長は説明する。

 EOBによる検査は精度が高く、8割程度はセオリー通りに診断できる。しかし残り2割の判断が難しいのだ。

 別の中高年の女性もこの2割に該当した。以前からアルコール性肝障害を患っており、超音波の検査で病変のようなものがあると指摘された。生活習慣や年齢から考えると、肝臓がんの可能性が疑われたが、実際は前述のような過形成だと分かった。

新しいセオリーを

 小林部長は「アルコール性肝障害では、もちろん腫瘍ができる可能性はあるが、一方で過形成ができるときがある。現在は知見の積み重ねにより、新しいセオリーができたといえる」と説明する。

 公式を当てはめて解ける問題であれば、公式を覚えたばかりの人でも回答は導ける。プロフェッショナルには、公式に当てはまらない問題を解く力が求められるのだ。

 金大附属病院放射線科では、まず診断の際、ダブルチェックを行う。特定の診療領域で十分な技能を身に付けた医師は専門医となれるが、まだその資格を有していない若い医師らを、中堅以上の専門医がサポートする。

 また、EOBで判別が難しければ、他の検査も行う。かつて主流だったカテーテルとCTを併用した検査や超音波、X線など他の機器も用いることで、見落としを防ぎ、限りなく正しい診断を目指すのだ。

 さらに判別の難しかった事例を他の病院と共有することも欠かせない。若手から中堅以上の医師が診断の合間をぬって、学会に参加し、他県の医師らが見た症例も自分の血肉とするのだ。小林部長は「人工知能では、セオリー外には対応できない。そしてこれが私たちに求められている役割だ」と話した。



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