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第82部・口は災いのもと

(2492)口は災いのもと 口腔がん(下) 合わない入れ歯が一因に 痛みや変色、自己チェックを
北國新聞(朝刊)2020年10月10日付

 80歳で自前の歯を20本以上残そうと呼び掛ける「8020(ハチマルニイマル)運動」がずいぶんと浸透したが、それでも日本では後期高齢者の歯の残存数は平均約16本で、約3割の人は総入れ歯だといわれている。入れ歯や義歯に違和感を覚えながらも、我慢して日々を過ごしてはいないだろうか。

 金沢市に住む70代後半の女性は、10年ほど前に、歯科医の勧めで総入れ歯にした。ここ数年、食事中に上あごが鈍く痛むようになり、鏡で口の中をのぞくと、上あごの右奥の方が赤くなっていた。

 「入れ歯が合ってないんじゃないか」という夫の心配を、女性は「作り直すとお金がかかるから、このままでいいわいね」と、いなしていたが、痛みはどんどんひどくなり、やがて話すのもつらくなってしまった。

進行がんと判明

 ようやく重い腰を上げた女性だったが、金大附属病院歯科口腔(こうくう)外科の診断は「歯肉がん」。しかも病状は進行しており、首のリンパ節への転移も確認された。結局、外科手術でがんを切除した後、放射線療法や抗がん剤治療も併用し、長い闘病を強いられることになったのである。

 口腔がんには、歯肉がんや舌がん、口底がん、頬粘膜がんなどの種類があり、いずれも慢性的な粘膜への刺激が、がんを引き起こす要因になると指摘されている。

 同病院歯科口腔外科の川尻秀一教授は「一因として考えられるのが、合わない入れ歯や義歯を無理して使うこと。『合わなくても使っていれば、体の方が合ってくる』という高齢者の方もいるが、これは危険です」と話す。

 噛む力は老齢になっても意外と衰えない。歯に不具合があると、その力がいびつに伝わり、口腔粘膜に過剰な刺激を加えることになる。女性が痛みを感じた上あごの右奥は、入れ歯の形が合っていないがために、食事のたびに負荷が掛かり、やがてがんを誘発することとなったのだ。

 入れ歯の形に問題がなくとも、正しい使い方や衛生管理ができていないと、がんのリスク要因になりかねない。就寝時に入れ歯を外さないでいれば、無意識のうちに口の中に余計な力が加わってしまう。入れ歯をきちんと洗って手入れしていないと、これも口腔粘膜に負担を掛けることになる。

 しかしながら、歯肉がんなどの口腔がんは、臓器のがんと異なり、患者自身が見て確認でき、痛みなどの不都合を実感しやすいという点で、早期発見につなげやすい面もある。

第一発見者になる

 川尻教授は「定期的に歯の検診を受けるだけでなく、患者さん自身が第一発見者になれるよう変化に敏感でいてほしい」と呼び掛ける。

 舌や粘膜が普段よりも赤くなったり、白く変色したりしていないか。舌や歯茎が硬くなったり、しびれや痛みを感じたりしないか。舌の動かしづらさはないか。入れ歯生活を送る人はなおのこと、そうした日々の点検を欠かさず、歯科医院にも定期的に通うことが望ましい。

 口腔がんは、腫瘍の大きさが2センチ以下であれば、患部を切除しても食事や会話への影響は少なく、術後も生活の質を保てる。「合わない入れ歯はがんのもと」と肝に銘じたい。



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