top 応急手当Q&A 休日当番医 リンク集 お問い合わせ
北國健康生きがい支援機構

医療記事特集
丈夫がいいね
トップページ > 医療記事特集

医療記事特集
丈夫がいいね

第82部・口は災いのもと

(2493)口は災いのもと 発達不全症(上) 「おくちポカン」がサイン 乳幼児期の「食」に原因
北國新聞(朝刊)2020年10月11日付

乳幼児期に口腔機能を発達させる重要性を説く宮内院長=金沢市鞍月3丁目
 全身の健康に悪影響を及ぼす口腔(こうくう)のトラブルは、何も高齢者だけの問題ではない。異変は、子どもたちの口にも起きている。

 石川県内に3人いる小児歯科専門医の一人、みやうちこどもデンタルクリニック(金沢市)の宮内康範院長は「『おくちポカン』の子が増えている実感がある。ただ、保護者も、歯科医すらも問題意識が薄いのが問題なんです」と訴える。虫歯治療などで来院する子どもを診(み)ていると、口がピッタリ閉じず、半開きの子が目立つというのだ。

 これは何を意味するのか。宮内院長によると、「おくちポカン」の状態は、口の機能が正しく発達していないことを示すサインの一つだという。

保険診療の対象に

 連載では以前に、加齢などに伴って食べる力が総合的に衰える「口腔機能低下症」という新たな病気の概念を紹介した。低栄養による筋力の低下や、ちゃんとかめないことに起因する誤嚥(ごえん)性肺炎、認知機能の低下などを招き、要介護状態に陥るリスクを増大させる厄介な病気である。

 その子供バージョンともいえるのが「口腔機能発達不全症」だ。口腔機能低下症と同じく2018年度から保険診療の対象となっている。「おくちポカン」は医療介入が必要な「病気」と見なされる場合があるということだ。

 口の閉まりが悪くなるのは、さまざまな要因が複雑に絡み、顎の成長が不十分になるためだ。そうなると、舌が正しく使えなくなり、うまくのみ込んだり、食べたりができなくなる。結果、丸のみしがちになって肥満の引き金になったり、逆に栄養の吸収が悪くなるせいで成長に遅れが出たり、痩せっぽちに育つ心配もある。

 さらに、口の閉まりが悪いと常に口呼吸になってしまうのがまずい。口が乾き、抗菌作用のある唾液で潤った状態を保てず、虫歯になりやすくなる。加えて宮内院長は「寝ている間も口呼吸だと睡眠の質が下がり、注意力が散漫になったり、落ち着きのない子になるという報告もあります」と説明する。

こすり付けは厳禁

 口腔機能発達不全症の要因は幾つも考えられるが、その一つとして宮内院長が、ある動画を示した。乳歯が生え始めた生後8カ月前後の子に、親がスプーンで離乳食を与える様子を撮影したものだ。

 最初の動画では、親が赤ちゃんの下唇にスプーンをあてがうと、それに反応して口がゆるゆると開き、上唇を使って離乳食を引き込むように口の中に運んだ。

 次の動画は、親が赤ちゃんの口にスプーンを差し入れ、上顎にこすり付けるようにして食べさせている。宮内院長は「これでは上唇で食べ物を自ら口の中に取り込む訓練にならない。食べる機能は勝手に身につくわけではないんです」と指摘する。

 家事に育児にと忙しい親が、赤ちゃんの食事にかける時間を短縮しようとするあまり、上顎にこすり付ける一方的な食べさせ方をしていると、発達の機会を奪いかねないのだ。もっと言えば、乳児期に正しい姿勢で授乳させねば、これもまた「おくちポカン」につながる可能性があるという。

 口を「災いのもと」にしないために、幼少時から親子で正しく「食」と向き合い、健やかな口の発育を促したい。



Copyright (C); THE HOKKOKU SHIMBUN All Rights Reserved.
〒920-8588 石川県金沢市南町2番1号 北國新聞社広報部 Maill : info@kenko-ikigai.com